大学院 修士課程案内
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事実と観念の狭間にあるもの、自己認識と修士History of The Open University of Japan 1981年 6月放送大学学園法(昭和56年法律第80号)公布・施行1981年 7月放送大学学園設立1983年 4月放送大学学園により放送大学設置1985年 4月放送大学学生受入れ開始放送(テレビおよびFMラジオ)による授業開始 1989年 4月第1回卒業式の挙行 1998年 1月CSデジタル放送による全国放送開始■沿革1998年 10月全国の学習センターで全科履修生受入れ開始2001年 4月放送大学大学院修士課程設置2002年 4月放送大学大学院修士課程学生受入れ開始 2003年 10月放送大学学園法(平成14年法律第156号)の施行に伴い特殊法人から特別な学校法人に移行2004年 3月最初の大学院修士課程学位記の授与 2006年 12月地上デジタル放送開始(関東エリア) 2010年 5月学生サポートセンター設置2011年 10月BSテレビ・ラジオ放送開始 2012年 4月radiko開始2014年 4月放送大学大学院博士後期課程設置2014年 10月放送大学大学院博士後期課程学生受入れ開始2017年 9月最初の大学院博士後期課程学位記の授与2018年 9月地上デジタル放送およびFMラジオ放送終了(関東エリア)2018年 10月BSマルチチャンネル放送開始02 私の好きなT.S.Eliot の詩、The Hollow Manの一節に “Between the idea And the reality Between the motion And the act Falls the Shadow” というフレーズがあります。ideaとreality、motionとactの間に影(陰)がさす、というイメージは鮮烈で美しいものです。私はこのフレーズに接するたびに、なぜか、芸は実(まこと)と虚(うそ)の皮膜の間にあるという近松門左衛門の言葉を想起します。この連想それ自体は、趣味の世界のたわいもない連想です。しかし、学問を職業とする人間としては、学問的自我の形成に深くかかわる連想だと自覚しています。 学問の対象は私たちを取り巻く神羅万象の事実です。ここではあえて学問と言い、科学という言葉を避けておきます。科学の定義にもよりますが、科学ではない学問があると考えるからです。 事実の観察と叙述から学問は始まります。しかし、叙述された事実は、あくまでも、私たちの認識にかかわりなく存在するであろう客観的事実とは異なる、「認識され叙述された事実」です。私たちの外に存在する事実を叙述する行為は、叙述者の観察を通じて得た認識を、叙述者の言語で表現する行為です。観察行為は、個々人の感覚器官を通じて得た観察対象にかかわる電気的刺激を、観察者の大脳が認識に変える行為です。自然科学や工学の分野では、私たちの感覚器官では把握不可能な現象を、機械、器具を通じて私たちの感覚器官に到達させるために、この関係はもっと複雑になります。 認識そのものと認識を言語表現する行為は、観察者独自の経験によって大脳内に形成された言語データベースの中から、特定の言葉を選び出し、組み合わせる行為です。言語は、表現された結果を他人と共有すること、すなわち「間」主観性の確保を目的に発達した道具です。しかし、どんなに「間」主観性を目的としても、脳内の言語データベースは個人の経験と不可分に形成されるために、言葉の使用方法、表現は各人の独自の感覚を含むものとなります。さらに、事実の観察を前提になす、観察主体の学問的主張にかかわる叙述は、多くの人の賛同を得ることを目的に行う説得行為です。そこには必然的にその人が他人と共有しえない可能性を持つ主観性の影が落ちることになります。  私は、学問を、これら諸作業の組み合わせによって初めて成り立つ、自己主張のための表現行為だと考えます。 そこに私は、近松の言う虚実皮膜の間で成り立つ芸の要素を見、Eliotの言うshadowを、ideaとrealityの間に立ち、motionとactの狭間を意識する自己の影だと受け止める自分を見ています。学士では、虚を虚、実は実と考え、ideaとreality、motionとactの間をつなぐ自己についての深い省察をせずに済むかもしれません。しかし、修士の学位を修め、あるいはそこからさらに博士を目指すことは、世界と自分、客観と主観の関係をつき詰めて考える能力を身につけるということでもあります。 皆さんが深い自己省察を得て、大いなる成果を上げることを祈っています。放送大学長來生 新 専門は法律学、特に経済法、行政法。最近はもっぱら海の利用や管理に関する法制度の研究、提言活動を行う。横浜国立大学名誉教授。法学修士(北海道大学)。放送大学大学院修士課程の魅力修士全科生修士選科生修士科目生プログラム紹介Q&A 評価される4つの理由学長メッセージ沿革博士後期課程教育の基本方針入学者受入方針オンライン授業MESSAGE

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