教養学部案内
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 マイクロソフトのCEOが、ある対談で、同社の企業文化について、Know it allから Learn it allという姿勢に変わるにはどうしたらよいか、という言い方をよくすると述べていました。私も同じような問題意識を持っており、生涯学習時代の教養教育の在り方、放送大学の教養学部の進むべき方向について、2018年11月に、231チャンネル開始の本学HPで概ね以下のように述べました。 情報化の進展は、すべての分野で情報生産の量とスピードを、想像もつかないほど増大させ、その増大は今後ますます激しくなります。医学関係の知識が倍増する時間が、1950年代には50年、80年代には7年、2010年には3.5年だったものが、2020年にはわずか73日になるともいわれています。それにより社会構成員が個人的に持つ知識の陳腐化は非常に速い速度で進み、しかもその速度は等比級数的に増します。 社会全体の情報量が限られ、その増加の速度も遅い時代にあっては、ある時点で獲得した知識の陳腐化は長い時間を経て徐々に進行します。これまでは、過去のある時点で獲得した知識の有用性の、相対的な有効性が長期に持続することが期待できました。多くの人が若い時代に獲得した学位の実質的な有効性が、人生の終末まで続くとの期待が可能だったということです。 しかし、過去の知識の相対的有用性が、信じられないほどの速度で低下しつつあります。それが情報化の冷徹な一面です。人が社会的に価値ある存在であり続けるためには、学歴や職歴にかかわらず、「人は常に学び続けなければならず」、しかも「それを生涯継続すること」が義務として求められる時代がすでに来つつあるのです。 このような時代の人間の評価は、学位に象徴されるknow it all か否かではなく、必要に応じて、問題解決に必要な最先端の情報を取捨選択し、みずからの知識とし、それを問題解決に用いて、新たな知見をもたらすことができるか否か。learn it all の能力を持つかが基準となるのです。(きすぎ・しん)専門は法律学、特に経済法、行政法。最近はもっぱら海の利用や管理に関する法制度の研究、提言活動を行う。横浜国立大学名誉教授。法学修士(北海道大学)。PROFILE2

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